フリーターに関する備忘録

たとえば私のようなフリーターは特に、自分のライフストーリーの展望を思い描くことが難しい。初期フリーターに関して、自分の「夢」を追うためにあえてバイト生活を選んだ人々と言われたことがあったが、私はむしろ、個人的な成功や社会への貢献という「夢」(=テキスト)をもつことができなかったために、今のようなフリーター生活を(結果的に)選んだのだと思う。多くのフリーターにとって、フリーター生活が無意味な「苦難」に感じられるのは、そこに「われわれの思考を未来へと向ける」ような展望がないこと、自分のライフストーリーを意味づけ方向づけるような「テキスト」を見出すことができないからではないだろうか。たとえば私がスチュアート・タノック氏の『使い捨てられる若者たち』を読んで解放的な喜びを感じたのは、そこに現代の「腰掛け仕事」に携わる若者たちのリアルな言行が「テキスト」として書き込まれていたからだった。